(前回記事の続きです)
③ 建売大手の現場はこんな状態
過去記事で既出ですが、上棟を待つ現場は大抵こんな風です。
自分の現場の目の前だったんで、パチリ!
雨養生は省略。手間が省けるもんね。合板がビショビショになっても知らないし。頭良いねー!
ちなみに写真の現場は、土台引のときから降雨があったので、不意の雨ではありません。また、監督も出入りしていてこの状態なので、会社も黙認ということです。
はい、材料も無養生でビショビショ。
MDF(乱暴にいえば紙)の耐力壁は濡らすと強度が出ませんねー。
はい、基礎はお池で木材プカプカー。KD材も炉で乾かして、それからしっかり水に浸けて、意味わかんなーい。
床下断熱のグラスウールもビチョビチョで~、そのまま剛床でフタ!バンバン!
これは別に珍しいことではなくて、標準的な状態です。
たまたま雨に逢わなければ、濡れない現場もあるかもね、というだけ。
チャンスがあって、こことはまったく別の造作中現場の床下点検口を見てみましたが、2cm程水が溜まったままでしたね。
このグループの会社を辞めた監督さんに訊いても、よくあることだそう。監督があとで潜ってチリトリですくい出すけれど、乾きはしないそうで。そりゃそうでしょう。
「あんな物は家じゃない!」 とのことでした。
無養生に限らず、色んな面で。
良心的な大工ではとても務まらないので、そもそもやっていることの訳が解っていないか、もしくは自分のことしか考えない非情な大工かが、建てているようです。
これは、有名かつ大変大きな会社です。業績も良く、雑誌やネットでもよく見かけ、高く評価されているようです。
当記事のようなことは、書籍、」雑誌、ネット記事には、それほど書かれていないです。嘘や無知は、産業を破壊し、生活水準を下げます。罪なことです。
まあ何にせよ、現場を見ればご覧の通り、クソですね。
買い主に対しても不誠実であるし、社会的に見ても、資源と労力の無駄遣いです。
最後に、建売の手間請大工に直接聞いた話をご紹介します。
建売の会社でも、時々は注文住宅の依頼があり、大工さんに少し良い単価で依頼の打診が入るそうです。ところが、それはすべて断るそうなんです。
「流石にお客さんの顔を見ながらは、気の毒すぎて仕事が出来ないから。」
④ 大部分の手間請大工の生活が苦しい理由
現場が上のような状態ですので、残念ながら悪質な手抜きをやってしまう職人さんもいるんだねということが、しっかり解っていただけたでしょうか。
それを踏まえて、じゃあどうなるんでしょう。
手抜きで稼ぐ職人がいると、適性単価は崩れます。
元請会社
「なんか、儲けているっぽい大工いるよね。もう少し単価下げても良さそうだよね。」
大工
(チッ。また次のうまい手を考えるか。)
「勘弁して下さいよ~。」
「お世話になりました、他を探します。」
元請会社
(大半がまだ付いてくるということは、旨味があるんだろうな。)
(割と丁寧なあの大工さんはやめちゃったけど、手早く進める努力が足りないんだろう。)
(丁寧だと工期も伸びて経費が嵩むから、入替えもありだな。)
こういうことが、延々30年くらい繰り返されてきたわけです。
ですから、真面目で良心的な手間請職人はとても食べていけなくなり、非情な職人が選抜され、その中間の職人は苦しい生活をする、ということになります。簡単な話です。
板挟みのストレスで体を壊したり、心を病んだりしてしまう人も実際にいます。どこの世界も厳しいとは言え、何かがオカシイのです。
さて、単価が不足すると、次に起ること。
建前や屋根、工事を急ぐ局面などでは、応援の大工さんの手を借りざるを得ません。でも、単価不足だからといって少ない報酬を設定すると人は来ないし、来ても荒かったり遅かったり、ほとんど任せられない判断力だったりと、よいことはありません。仕方なくマトモな(といっても低水準になりがちだけど)賃金を払うと、自分(親方)の取り分がどんどん減ってしまいます。ちょっと油断すると、お手伝いの人の半分とか。
そうすると、「あほらし!」となって、さらにモラルが壊れていくわけです。
弟子を雇うことが出来ない理由も似たところがありますが、それはまたあとで触れることにします。
では今回はこの辺りで。次回以降は・・・
⑤ 徒弟制度のオワコン化、それに変わる育成の仕組みは不備のまま
⑥ 市場で指導的立場にある経営者達の無知
⑦ 手間請が駄目。では常庸なら良いのか?
⑧ 結局、大工はどのように働けば良いのか。
⑨ 元請、また建築主は、どのように大工を使用すれば誠実な仕事を引き出せるのか。
というような話を、考えています。変わるかも知れませんが。
ではでは。